【世界で通用する最強の子育て】 第3章 社会とつながる力 ダイジェスト
2019年3月に『世界で通用する最強の子育て』という書籍を出版致しました。
その一部をご紹介いたします。
グローバルに活躍することを考えると、個人として力をもつだけではなく、他者と良い関係性を作り、社会に働きかけていく力も必要になっていきます。
(個人としての「意志をもつ力」「考える力」については第1章、第2章のダイジェストでもお話ししているのでぜひご覧ください。)
社会とつながる力とは
各国を回る中で、子どもがグローバルに活躍するためには、以下の3つの「社会とつながる力」を意識することが大切だと、私は思うようになりました。
①相手の違いをポジティブに受け入れる
②相手を深く理解する
③相手にはっきりと意志を表明する
この記事ではこれらの力をはぐくむための方法を一緒に考えていきたいと思います。
相手の価値観をポジティブに受け入れる
私が海外に出て初めて気づいた日本の大きな特徴は、日本は島国であり、異なる文化をもつ人と日常的に接する機会が他国に比べて著しく少ないということでした。
世界を見回してみれば国境を他国と接している国が大多数であることに気が付きます。
また、同じ国内に異なる人種や宗教の人々が集まって暮らしていることも珍しくありません。
海外では、子どものころから違う文化や価値観をもつ友人たちと、日常的に交流があることが当たり前になっているのです。
文化や価値観が違うのは当たり前
異なる文化や価値観をもつ人と日常的にかかわっていると「違いがあることは当たり前だ」という意識が人々の中に育つようになっていきます。
そしてたとえ違いがあったとしても批判せず受け止め、ポジティブに許容する態度も身に着けていきます。
例えばマレーシアでは、異なる宗教を信じている人々が混ざりあって暮らしています。
生活習慣はもちろん、休日も違うため、みんなが同じ時期に長期休暇を取るということがありません。
彼らにとって「人によって違いがあること」は当たり前。
相手の文化や習慣を否定する人や、批判する人はもちろんいません。
一方日本では、異文化に接する機会が極端に少ないがために、無意識のうちに自分たちの価値観や文化を「常識」だと考えてしまいます。
お互いに不寛容な日本人
日本人は、相手との違いをポジティブに受け入れるという土壌がないため、同じ日本人同士でも不寛容だと感じる場面が多くあります。
例えば会議一つとっても、みんなが同じ時間に出席することが当たり前。
家族の用事があったとしても自分の予定を調整して会議に出席できるようにした、という方は多いのではないでしょうか。
オランダで驚いたのは、会議中の途中参加、離席などが当たり前になっていることです。
ドタキャンや、連絡が返ってこないことも多々あります。
しかしそれが大きく非難されるようなことはありません。
「何かその人なりの事情があったのだろう」と考えて済まされるのです。
日本はどうしても同調圧力が強く「みんなに個人が合わせるべきだ」という考えが根強くあるように感じます。
だからこそ相手との違いに不寛容であり、それによって多くの人が苦しんでいる。
私は、一人ひとりが幸せになるためにも、「お互いの違いをポジティブに受け入れる」という姿勢を持ってもらえたらと思っているのです。
では、日常的に異文化の人々と交流する機会がない日本で、子どもに対してどのように伝えていけばいいのでしょうか。
日常生活において、日ごろから親が価値観の違いを理解する姿勢を示していくことが重要です。
相手が自分の意図と違う行動をしたときは、
「パパはこう思っていたけど、あの人はこう考えて行動したのかもしれないね。」
などと、相手の価値観も受け入れる姿勢をぜひ見せてあげてほしいと思います。
そして、子ども自身が友人に対して違いを否定するような発言をした際には、「なぜその違いが生まれたのか、どうしたらポジティブに受け入れることができるのか」を一緒に話し合ってみてください。
相手を深く理解する
海外の人々は、「相手が何者なのかをより深く理解しようとする」という点で、日本と大きく差があるように思います。
初めて会った人との会話を例にとると、日本では「○○会社」といった所属や「営業」という職種での会話が成立していきます。
しかし海外ではさらに一歩踏み込んだ会話がされるのです。
「今どんなプロジェクトに取り組んでいるか」「なぜそのプロジェクトに取り組みたいと思ったのか」といった質問までされ、答える側も相手に「自分が何者なのか」ということが相手にしっかり伝わるように具体的に答えるのが一般的になっています。
「相手を深く知る・知ってもらう」という意識を持っていることは、信頼関係を築く上で重要なことだと、私は思っています。
相性が合わなければ環境を変えてもいい
相手のことを深く知ったとしても、相性が合わないと感じる人が世の中にはいると思います。
海外の人たちはそんなとき「場所を変える」。
子どもであっても同じで、もし子どもが相性の良くない相手と付き合って苦しんでいる場合は、親はすぐに「環境を変える」という手段をとるのです。
例えば学校の先生と相性が悪いといった場合、日本では「先生としっかりと相談してみたら?」と親が言ってしまうこともあるかもしれません。
しかし海外では、「無理に相手に順応する必要はない」という考え方をします。
無理にその人間関係に押し込めるのではなく、一緒に過ごす相手は自分で選べることを子どもに教えてあげてほしいものです。
意見をはっきりと伝える
「日本人は自分の意見をしっかり伝えられない」とはよく言われますが、ある日本人の方からこんな事例を聞きました。
海外のシェアハウスでのことです。
誰も食器洗いをしないのでいつも見かねた日本人が家事をしていました。
ある日「なぜ僕だけがやらねばならないのか」と怒りながら伝えると、他の国のメンバーから「君は何も言わずにやるから好きなのかと思っていた。僕たちにやってほしいならそう言ってくれればよかったのに」と返されたと言います。
日本では、わざわざ口に出して要求を伝えなくても周りが意図をくみ取って動いてくれることも多いですよね。
しかし、海外では前提となる文化や価値観が違う人が集まっているのが当たり前。
だからこそ、意見があるときは明確に言葉にして伝えなくてはいけないと考えるようになったのだと、その日本人の彼は言っていました。
そもそも日本と海外では「意見を言う」というプロセスが大きく異なっています。
日本人は意見を言う前に相手の気持ちや状況を考慮して、その上で自分の行動や発言を決める人が多いように感じます。
一方海外では、まず自分の本当の意見を伝え、その後意見の違いがあった際には摺合せを行っていくというプロセスがとられているのです。
意見の対立は人間関係の対立ではない
日本では、「意見の対立が場の雰囲気を乱してしまう」「自分の意見が否定されると人格が否定されているように感じる」というような人もいるのではないでしょうか。
海外では、例え意見が違ったとしてもそれをもって「こいつは嫌なやつだ」と相手を判断したりはしません。
むしろ「何かをしてほしい、してほしくない」という意見があれば、どんなに小さなことでも、それをはっきり口に出して伝えるということは、違う文化を持つ人々の間では意志の疎通を図るために最も重要なことです。
さらに年齢や目上の人に対して「遠慮して自分の意見を言わない」ということもあまりありません。
上司であろうと、先生であろうと、ファーストネームで呼び合う関係性が当たり前のように築かれています。
海外のようなフラットな関係を日本でも作ることができれば、より生産的な場面が増えていくのではないでしょうか。
意見をはっきり伝えるための2つのコツ
子どもたちが海外の人々と同様に意見をはっきり表明できるようになるためにはどうしたらいいのでしょうか。
家庭でできることは以下の2つだと思っています。
①相手に意見と理由を言うスキルを身に着けるサポート
②相手を特別視しない視点を身に着けるサポート
私が家庭で実践していること
オランダでの教育を参考に、息子には「やりたいことがあるときは、パパにその理由も一緒に説明してみてほしい」と伝えています。
以前は新しいスパイクが欲しいと頼んできたときに、「なぜ新しいスパイクを買わなくてはいけないのか」を説明してほしいとお願いしました。
幼い息子に「どうしてそう思うのか?」「もしかしてこういう理由かな?」と選択肢を提示したりしながら、本人の口で意見と理由を言えるように練習をしました。
一見面倒に感じるかもしれませんが、日常的な親子の会話でも「相手に意見と理由を伝える」練習をすることができるのです。
また、日本だと異年齢の人と関わる機会がとても少なくなっています。
子どもが様々な年齢の人に触れる機会をつくってもらえればと思います。
私は、息子と一緒に人と会う時、「相手に失礼のないようにしなさい」とは伝えません。
息子が委縮してしまい、本当の自分の意見を口に出せなくなってしまうと思うからです。
その代わりに「相手がどんな立場の人であっても、物おじせずきちんと意見を言ってもよい」ということを伝えたいと思っています。
例えばマレーシア財閥の社長に会わせる際にも「大企業の社長だよ」と肩書は伝えません。
「お父さんの仕事の仲間だよ」とフラットな関係性を伝えるようにしています。
人と人との間に、過度に上限関係を作らないことは、これからも大切にしていきたいものです。
日本だと、子どもが大人同士の話に首を突っ込もうとすると「大人の問題に子供は口を挟んではいけないと遮ってしまうことが多いかもしれません。
しかし、幼いころから大人と対等に話す場面を用意することは、非常に重要だと感じています。